とも限りませんから、実は女房にも隠して居りましたが、去年の十月、娘が寺参りながらここへ参りました時に、女房はちょうど留守でございまして、わたくしと差し向かいで暫く話して帰りましたが、その時に娘の口からちらり[#「ちらり」に傍点]と聞いたことがございますので……」
「むむ」と、半七も思わずひと膝乗り出した。「どんなことを聞かされたね」
「別に取り留めた事でもないのですが……」と、長五郎はまた躊躇した。
「ここでおめえが何を云おうとも、おれはみんな聞き流しにする。おめえは勿論、屋敷へも決して迷惑はかけねえ。遠慮無しに話してくれ」と、半七は催促するように云った。
「はい」
「いつまでも焦《じ》らしていちゃあいけねえ。おれだって洒落《しゃれ》や冗談に訊《き》いているのじゃあねえから、そのつもりで返事をしてくれ」
半七もやや焦れて来た。
云おうとして云い得ないように、長五郎はいつまでも渋っていた。
五
その明くる日の朝、幸次郎が半七の家《うち》へ忙がしそうにはいって来た。
「お早うございます[#「ございます」は底本では「こざいます」]。早速ですが、ゆうべちっと変なことがありま
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