ので……」
「あれ、お前さん。飛んでもない」と、お富はたしなめるように云った。「それじゃあ奥さまが何か細工をして、内の娘を沈めたとでも云うのですかえ。そりゃあ違います、大違いです。お屋敷の奥さまに限って決して決して、そんな事をなさるような方《かた》じゃありません。奥さまはまことに結構なお方で、それはわたしが請け合います。一体お前さんはそんなことを誰に聞いたのです」
激しい権幕で詰問されて、半七も少しく返事に困った。
「いや、奥さまに限ったわけじゃあありませんが、お屋敷には大勢《おおぜい》の男もいる、女もいる。その大勢のうちには自然こちらの娘さんと仲の悪い者も無いとは云えません。何かのことで娘さんを恨んでいる者も無いとは限りませんから……」
「そりゃあ恨まれているかも知れませんが……」
何か思いあたることでもあるらしい口ぶりに、半七は透かさず訊き返した。
「世の中には外道《げどう》の逆《さか》恨みと云って、自分の悪いのを棚にあげて、人を恨む者もありますからね。何かそんな心あたりでもありますかえ」
お富はまた黙ってしまった。この夫婦は自分でも云う通り、屋敷の迷惑になることは決して口外
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