半七捕物帳
ズウフラ怪談
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)劈頭《へきとう》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)駒込富士前|町《ちょう》

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)顳※[#「需+頁」、第3水準1−94−6]《こめかみ》
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     一

 まず劈頭《へきとう》にズウフラの説明をしなければならない。江戸時代に遠方の人を呼ぶ機械があって、俗にズウフラという。それに就いて、わたしが曖昧《あいまい》の説明を試みるよりも、大槻《おおつき》博士の『言海』の註釈をそのまま引用した方が、簡にして要を得ていると思う。言海の「る」の部に、こう書いてある。――ルウフル(蘭語Rofleの訛)遠き人を呼ぶに、声を通わする器、蘭人の製と伝う。銅製、形ラッパの如く、長さ三尺余、口に当てて呼ぶ。訛して、ズウフル。呼筒。――
「江戸時代にも、ズウフルというのが本当だと云っている人もありました」と、半七老人は云った。「しかし普通にはズウフラと云っ
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