まして、おまえは商売だから金銀細工の地金屋《じがねや》を知っているだろう。これを一度に持って行くとおかしく思われるから、幾つかに分けて方々の地金屋へ持って行って、相当の相場で売って来てくれ。その働き賃には今までの借金を帳消しにするばかりでなく、相場によっては又幾らかの手数料をやるというのです。わたくしも慾が手伝って、無分別に請け合って、一本の蝋燭をあずかって帰って、念のために蝋燭の横っ腹へ小さい穴をあけて見ると、なるほど金がはいっているのです。金無垢《きんむく》の伸べ棒を芯にした蝋燭……不思議な物もあるものだと思うに付けて、わたくしは又急に気味が悪くなりました。宗兵衛という人はどうしてこんな物を持っているのだろうと、翌日また出直して仔細を訊きに行きました」
「宗兵衛はなんと云った」
「おまえは知るまいが、京大阪の金持は泥坊の用心に、こういう物をこしらえて置く。どんな泥坊が徒党を組んで押し込んで来ても、蝋燭なんぞには眼をかけないから、こうして隠して置くのが一番確かだ。もう一つには、それが通用の小判であると、自分もとかくに手を付けて使い勝だから、地金のままで仕舞って置くのが無事だということ
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