に訊いた。
「おかみさんは駕籠に乗って、本所のどこへ行ったか知らねえか」
「本所と聞いたばかりで、どこへ行ったか存じません」
「本所に親類か知人《しるべ》でもあるのか」
「本所からは増さんという人が時々に見えますが、家《うち》はどこにあるのか存じません」
「おかみさんの駕籠は辻倉だね」
「そうでございます」
「じゃあ、表の辻倉まで行って来てくれ」と、半七は幸次郎に云いつけた。「二日の晩にここのおかみさんを担《かつ》いで行った駕籠屋を調べて、本所のどこまで送ったか訊きただして来るのだ」
幸次郎はすぐに出て行った。その帰るのを待っている間《ひま》に、半七は家内を見まわると、寄付き、茶の間、座敷、納戸《なんど》、女中部屋の五間《いつま》で、さすがは小金でも貸して暮らしているだけに、家内はきちんと片付いて、小綺麗に住んでいるらしく見えた。台所へ出ると、柱には細長い竹の紙屑籠が掛けてあった。
「おい。この紙屑はこのごろ売ったかえ」
「屑屋さんは先月の晦日《みそか》に来て、それぎり参りません」と、お由は答えた。
半七は紙屑籠をおろして、念のために紙屑をつかみ出した。それを一々ひろげて丹念に調べ
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