行きをうかがっていると、元八がドジを組んで私たちに調べられることになった。一旦は無事に帰されたものの、油断していると元八のような奴は何をしゃべるか判らない。殊に十五夜の晩に、一歩の金をつかませたという秘密もあるので、お鎌はおまんと相談して、元八を何処へか呼び出して、例の睡り薬を一服盛ってしまったんです。大方おまんが色仕掛けか何かで、凄い腕を揮ったんでしょう。決して外へ出ちゃあならないと、私が元八に堅く云い聞かせて置いたのに、うっかり誘い出されたと見えます。その死骸を近所の川へでも投げ込んでしまえばいいのに、同じ寺の古井戸へ運んで来たのが二人の女の運の尽きで、忽ちわたし達の網に引っかかったんです。こいつらに限らず、犯罪者というものはとかく同じことを繰り返す癖があるので、それがいつでも露顕の端緒になる。まったく不思議なものです」
「元八の死骸は誰が運んで来たんです。女たちの手には負えないでしょう」
「元八は小柄の男で、お鎌は頑丈な女ですから、自分が負って行ったということになっているんですが、実際はどうでしょうかね。緑屋の甚右衛門は堅気になっていますが、昔の子分のうちには今でもぶらぶらしてい
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