出して来たんです。箱は雨露《あめつゆ》にさらされているが、そんな古いものじゃ無さそうだということでした」
「犬が啣《くわ》えて来るくらいじゃあ大きなものではあるめえね」と、半七はきいた。
「それでも長さは小一尺ほどもある細長い箱で、はて何だろうとすぐに打ち毀《こわ》してみると、なかには藁人形……。それはまあ有りそうなことですが、ねえ、親分、凄いじゃあありませんか。藁人形には小さい蛇をまきつけて、その蛇のからだを太い竹釘で人形に打ちつけてある。蛇はまだ死なねえとみえて、びくびく動いている。さすがの中間共もわあっ[#「わあっ」に傍点]と云って、おもわずその箱をほうり出したそうですよ。それでも気の強い奴があって、よくよくあらためて見ると、また驚いた。というのは、蛇ばかりでなく、人形の腹には壁虎《やもり》が一匹やっぱり釘づけになって生きている。よっぽど執念ぶかい奴の仕業《しわざ》に相違ありませんね」
「それから、その箱をどうした」
「中間たちも薄気味悪くなったんでしょう。こんなものはしょうがねえというんで、川へほうり込んでしまったそうですよ」
半七はまた舌打ちした。その怪しい箱が何かの手がか
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