に調べあげてまいります」
半七は家へ帰って、すぐ子分の幸次郎と善八を呼んだ。
「ほかじゃあねえが、清水山の一件だ。おれは馬鹿にしてかかっていたので、旦那の方から声をかけられてしまった。もう打っちゃっては置かれねえ。ひと通り調べてきてくれ。だが、おれの指図するまでは現場の方へはむやみに手をつけるなよ」
「あい。ようがす」
二人はすぐに出て行った。今までは初めから馬鹿にし切って、ほとんど問題にもしていなかったのであるが、さてそれが一つの仕事となると、半七の神経はだんだんに鋭くなって来て、なんだか子分共ばかりには任せておかれないような気にもなったので、かれも午過ぎから家を出た。それは喜平らが最後の探検から一と月あまりを過ぎた頃で、十月ももう末に近い薄陰りの日であった。
「なんだか時雨《しぐ》れて来そうだな」と、半七は低い大空を見あげながら歩き出した。
どこという的《あて》もないが、ともかくもその場所をよく見とどけて置く必要があるので、半七はまず柳原の堤の方へ足をむけた。
神田に多年住んでいて、ここらは眼をつぶっても歩かれるくらいによく知っているのではあるが、こういう問題が新らしく湧き
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