みんなも喜んで、小按摩の周悦には下駄屋から巧く説得して、自分たちの味方にすることになったんですが、その周悦という奴は今では立派な不良少年になっているので、これも面白がってすぐ同意したというわけです。自体口が少し大きい奴なので、それから思いついて、絵の具で口を割ったり、象牙《ぞうげ》の箸を牙《きば》にこしらえたりしたんですが、周悦の家にはおふくろがあります。そのおふくろの手前、世間の手前、化け物のこしらえで家を出るわけには行きませんから、やはり商売に出るようなふうをして、杖をついて、笛をふいて、いつもの通りに家を出て、かの空屋敷の台所の六畳を楽屋にして、そこですっかり化けおおせた次第です。その時に周悦はふところに入れていた笛をおとしたのを、あとになって気がついたんですが、どこで落としたか判らないので、ついそのままにして置いたのを、運悪くわたくしに見つけられたんです。それからだんだん調べてみると、この小按摩は年に似合わず銭使いがあらい。近所の評判もよくない。そこで引き挙げて吟味すると、なんと云ってもそこは子供で、一つ責めると、みんな正直に白状してしまいました」
「そうすると、その下駄屋と御
前へ 次へ
全18ページ中16ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング