なに、雷獣でも出て来たら、二人で取っ捉《つか》まえて金儲けをしまさあ。はははははは。だが、まあ、こっちへ引っ越しましょう。だしぬけにざっと来るかも知れませんから」
わたしも手伝って、座蒲団や煙草盆を畳の上に運び込んだ。
四
「これでいい」と、老人は又おちついて話し出した。
「わたくしは先ず辻番へ行って、そこに引き取られている娘の死骸をみせて貰いました。それからだんだんと訊《き》いてみると、その蛇の一件の最中に、油断して紙入れや莨入《たばこい》れを掏《す》り取られた者もあるという。それで先ず大体の見当はつきましたが、蛇と切髪の方がまだよく判りません。蛇はともかくも、その切髪の理窟が呑み込めないので、わたくしは不図《ふと》かんがえて、この近所で蛇捕りを商売にしている者を探しました。蛇《じゃ》の道は蛇《へび》というのはまったく此の事かも知れませんね。ははははは。子分の善八がそこらを駈けまわって、新宿の裏に住んでいる九助という蛇捕りを探し出しました。蛇や蝮《まむし》を捕るのを商売にする男で、それを連れて来て詮議すると、九助はわけも無く白状しました。
九助は商売で、前に云った蛇
前へ
次へ
全31ページ中24ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング