念のために抽《ひ》き出すと、それは可なりの目方があって、なんだか小砂利《こじゃり》でも包んであるかのように感じられた。番頭立会いでその風呂敷を解いてみると、中からは麻袋や小切れにつつんだ南京玉がたくさんあらわれた。
「何だってこんなに南京玉を買いあつめたのでしょう」と、番頭も呆《あき》れていた。
どの風呂敷包みからも南京玉が続々あらわれて来たので、半七もさすがにおどろいた。
「なんぼ土産にするといって、こんなに南京玉を買いあつめる奴もあるめえ。商売にする気なら、どこかの問屋から纒《まと》めて仕入れる筈だ。割の高いのを承知で、店々から小買いする筈はねえ。どうも判らねえな」
うず高い南京玉を眼のまえに積んで、半七は腕をくんでいたが、やがて思わず口の中であっ[#「あっ」に傍点]と云った。
三
「おい、番頭さん、まったく誰もこの男のところへ尋《たず》ねて来たことはねえかどうだか、もう一度よく考え出してくれねえか」と、半七は番頭に訊《き》いた。
「さあ、わたくしはどうも思い出せませんが、それでもわたくしの留守のあいだに誰か来たことがあるかも知れませんから、女中どもを一応調べてみ
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