たからであった。近所の娘子供が落としたものか、あるいは死人の所持品かと、半七は自身番へ引っ返して死人の袂を丁寧にあらためると、袂の底からたった一と粒の南京玉が発見されたので、かれが南京玉の持主であったことは確かめられた。四十以上の田舎者らしい男が南京玉などを持っている筈がないから、おそらく何処かの子供にでもやるつもりで袂のなかに入れて置いたものであろうと半七は鑑定した。
勿論その南京玉をどうして手に入れたのか、買ったのか貰ったのか、ちっとも見当は付かないのであるが、仮りに先ずそれを買ったものとして、半七はその買い先をかんがえた。もともと子供の玩具《おもちゃ》同様のものであるから、どこで買ったか殆ど雲をつかむような尋ね物であったが、田舎の人は詰まらないものを買うにも、とかく暖簾《のれん》の古い店をえらむ癖があるのを知っているので、かれは先ず馬喰町の近所で最も名高い小間物屋に眼をつけて、案外に安々とその手がかりを探り出すことが出来たのであった。
「ここまでは巧く運んだが、この先がむずかしい」と、彼は又しばらく考えていた。
「もうわたくしは引き取りましてもよろしゅうございましょうか」と、信
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