か」
半七はあらためてその小坊主の顔をみた。かれは色の白い、眼の大きい、見るからに利口そうな少年であった。
「じゃあ、このあいだ和尚《おしょう》さんの一件のあったお寺だな。そこで、その仏さまはお前さんが落したのかえ」
「今ここで見つけたのです」
「じゃあ、おまえさんのじゃあ無いんだね」
小坊主はその返答に躊躇しているようであったが、結局、これは自分の寺のものであるらしいと云った。
「お寺の物がどうしてこの溝のなかに落ちていたんだろう」と、半七はかれの顔色をうかがいながら訊いたが、小坊主はやはり何か躊躇しているらしく、口唇《くちびる》をむすんだままで少しうつむいていた。
この小さい仏像について何かの秘密があるらしいと睨んだので、半七はたたみかけて訊いた。
「和尚さんはここらの溝のなかに死んでいたんだそうだね」
「はい」
「そこにその仏像が落ちていて、しかもそれがお寺の物だという。そうすると、和尚さんの落ちた時に、それも一緒に落したのかね」
「そうかも知れません」
「隠しちゃいけねえ。正直に云って貰いたい」と、半七はすこし詞《ことば》をあらためた。「実はわたしは町方《まちかた》の御用
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