半七捕物帳
小女郎狐
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)手心《てごころ》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)大岡|捌《さば》き
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「二点しんにょう+端のつくり」、第4水準2−89−92]
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一
なにかのことから大岡政談の話が出たときに、半七老人は云った。
「江戸時代には定まった刑法がなかったように考えている人もあるようですが、それは間違いですよ。いくら其の時代だからといって、芝居や講釈でする大岡|捌《さば》きのように、なんでも裁判官の手心《てごころ》ひとつで決められてしまっちゃあ堪まりません。勿論、多少は係りの奉行の手心もありますけれども、奉行所には一定の目安書《めやすがき》というものがあって、すべてそれに拠って裁判を下《くだ》したもので、奉行の一料簡で殺すべきものを生かすなんて自分勝手のことは、なかなか出来ないような仕組みになっていたんです。それは昔も今も同じことで
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