は通りぬけが出来たんですが、もともと広い露路でもなし、第一無用心だというので、おととし頃から奥の出口へ垣根を結ってしまったんですが、もういい加減に古くなったのと、近所の子供がいたずらをするのとで、竹はばらばらに毀れていますから、通りぬけをすれば出来ますよ」
「むむ」と、半七は考えていた。「無論、検視もあったんだろうが、なんにも手がかりは無しか」
「どうも判らねえようですね。今も田町《たまち》の重兵衛の子分に逢いましたが、重兵衛はなにか色恋の遺恨じゃあねえかと、専らその方を探っているそうです。なるほど、お作はあんな女ですから、そこへ眼をつけるのも無理はありませんが、刃物で突くとか斬るとかいうなら格別、啖《く》い殺すのがどうもおかしい。それもお作一人でなし、ほかに二人も死んでいるんですからね。田町の子分共もこれにはちっと行き悩んでいるようでしたよ」
「喉笛へ啖《くら》い付くとはよくいうことだが、なかなか出来る芸じゃあねえ」と、半七はまた考えていた。「ほんとうに啖い殺したのかしら、鉄砲疵には似たれども、まさしく刀でえぐった疵、とんだ六段目じゃあねえかな」
「さあ」と、庄太も少し考えていた。「
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