っと仇が打てるものと思っていたんだろう。厄介なことをしやあがった。人間ふたりを殺してどうなると思っているんだか、考えると可哀そうにもなるよ」
半七も溜息をついた。
「そうなると、その生薬屋に奉公している弟というのも調べなければなりませんね」と、源次は云った。
「勿論だ。おれがすぐに行って来る」
支度をして、半七はすぐに両国へゆくと、その薬種屋は広小路に近いところにあって、間口も可なりに広い店であった。店では三人ばかりの奉公人が控えていて、帳場には二十二三の若い男が坐っていた。
「こちらに宗吉という奉公人がいますかえ」と、半七は訊いた。
「はい、居ります。唯今奥の土蔵へ行って居りますから、しばらくお待ちください」と、番頭らしい男が答えた。
店に腰をかけて待っていると、やがて奥から十四五の可愛らしい前髪が出て来た。
「おい、おめえは宗吉というのか。ちょいと番屋まで来てくれ」
「はい」と、宗吉は素直に出て来た。その様子があまり落ち着いているので、半七もすこし案外に思った。
町内の自身番へ連れて行って、半七は宗吉を詮議したが、その返事はいよいよ彼を失望させた。自分の姉は馬道の上州屋に奉
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