はなかったが、こういう事件を仕出かした以上、三島に向ってその破却を勧告するのが親類の義務であった。秘密をつつんでいた土蔵も無論に取り崩されたが、お通が見たという大蛇は姿を現わさなかった。おきわもそんな蛇を見たことはないと云った。霊ある蛇はわざわいを未然に察してどこかへ立ち去ってしまったのか、あるいはお通のおびえた眼に一種のまぼろしが映ったのか、それはいつまでも疑問として残されていた。



底本:「時代推理小説 半七捕物帳(二)」光文社文庫、光文社
   1986(昭和61)年3月20日初版1刷発行
入力:tatsuki
校正:菅野朋子
1999年8月3日公開
2009年9月15日修正
青空文庫作成ファイル:
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