いうことを云い触らさせて、津の国屋一家に恐れを懐かせ、さらに菩提寺の住職から次郎兵衛をおどして、体《てい》よく隠居させて自分の寺内へ押し込めてしまうつもりであった。そうすれば、いやでも娘のお雪に婿を取らなければならない。その婿には池田屋十右衛門の次男を押し付けるという段取りで、だんだんにその計略を進行させることになった。しかし堅気の商人《あきんど》や寺の坊主ばかりでは、万事が不便であるので、かれらは浅草下谷をごろ付きあるいている無宿者の熊吉と源助とを味方に抱き込んだ。
 お安の幽霊に化けたのは、浅草のお兼という矢場女で、見かけは十七八の初心《うぶ》な小娘らしいが、実はもう二十を二つも越しているという莫蓮者《ばくれんもの》で、熊吉の世話でこれもこの一件の徒党に加わったのであった。熊吉と源助は津の国屋の近所を徘徊して、絶えずその様子をうかがっているうちに、お雪の師匠の文字春が堀の内へ参詣に行って、その帰り路はきっと日が暮れるのを見込んで、撫子の浴衣をきたお兼を途中に待ち受けさせて、怪談がかったお芝居を演じさせたのであった。しかし文字春が迂濶《うかつ》にそれを世間に吹聴しないらしいので、かれ
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