店を持っている池田屋十右衛門、浅草に店を持っている大桝屋弥平次、無宿のならず者熊吉と源助、矢場女お兼、以上の五人は神田の半七と桐畑の常吉の手であげられた。津の国屋の菩提寺の住職と無宿の托鉢僧とは寺社方の手に捕えられた。これでこの一件は落着《らくぢゃく》した。
これまで書けば、もう改めてくわしく註するまでもあるまい。池田屋十右衛門と大桝屋弥平次と菩提寺の住職と、この三人が共謀して、かねて内福の聞えのある津の国屋の身代を横領しようと巧んだのであった。津の国屋の主人次郎兵衛は貰い娘《こ》のお安をむごたらしく追い出して、とうとう変死をさせたことを内心ひそかに悔んでいた。殊に惣領娘のお清があたかもお安と同い年で死んだので、彼はいよいよそれを気に病んで、おりおりには菩提寺の住職に向って懺悔話をすることもあった。それが彼等三人に悪計を思い立たせる根源で、坊主が一人加わっているだけに、かれらはお安の死霊を種にして津の国屋の一家をおびやかそうと企てた。
今日から考えると、頗る廻り遠い手段のようではあるが、その時代の彼等としては余ほど巧妙な手段をめぐらそうとしたのかも知れない。かれらはまず死霊の祟りと
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