これでまずお杉と吉見との関係は確かめられた。ゆうべも吉見が来たらしいかと訊いたが、荒物屋の女房もさすがにそこまでは知らないと云った。そこへ鳥さしの姿が見えたので、半七は外へ出て招くと、老人は黐竿をかかえて小走りに急いで来た。
「もし、これだけ捕って来ました」
 老人は一生懸命になって猟《あさ》り歩いたらしい。運の悪い雀が十二三羽も籠の中に押込まれていた。
「たいそう捕れましたね」と、半七は笑いながら云った。「それだけあればたくさんです。ところで、どうでしょう。その雀の羽には黐が付いているが、それでも飛べますか」
「飛べるのもあり、飛べないのもあります」と、老人は云った。「しかし、どうせこの黐は洗って取るのです。黐の付いているままでお鷹にやるわけには行きませんからね」
「ここで逃がさないように巧く洗えますかえ」
「そりゃ洗えないことはありませんよ」
「そうですか。だが、まあ、その儘にして出かけましょう」
「これから何処へまいります」
「すぐそこの料理屋へ行くんです」
 半七は老人に何かささやくと、彼はおとなしくうなずいた。草履の代を払って、半七は先に立って出てゆくと、やがて彼《か》の辰蔵
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