とう。それから……姐《ねえ》さん達は、けさここらへ鷹の降りたという噂を聞かなかったかね」
二人の女は黙っていた。
「知らないかえ」
「知りませんね」と、初めの女が答えた。
「いや、ありがとう」
挨拶して半七は別れた。教えられたままに名主の家をたずねて、鷹のことを聞き合わせると、村じゅうで誰も見つけたものはないらしく、現に今までも届けて来たものは無いとのことであった。鷹は前にもいう通り、普通の家で飼うべきものでない。その鷹の詮議とあれば容易ならぬことと察したらしく、名主も眉をよせて訊いた。
「そのお鷹はやはり御鷹所のでございますか」
「千駄木のですよ」と、半七は正直に答えた。「しかし、これは内密に探索しなければならないのですから、おまえさんの方でもそのつもりで……。なにか心当りがありましたら、わたしのところまでこっそり知らせてください」
「承知しました」
名主によく頼んで置いて、半七はそこを出ると、空の色はいよいよ怪しくなって来た。引っ返して名主のところで傘を借りて来ようかと思ったが、それも面倒だとその儘《まま》すたすた歩き出すと、川の縁でさっきの二人の女にまた逢った。
「や、さっ
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