半七捕物帳
鷹のゆくえ
岡本綺堂
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)亀戸《かめいど》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)一番|容貌《きりょう》のいい
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)半七にかま[#「かま」に傍点]をかけられて
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一
老人とわたしと差し向いで、五月の雨のふる日曜日を小半日も語り暮した。時節柄で亀戸《かめいど》の藤の噂が出た。藤の花から藤娘の話をよび出して、それから大津絵の話に転じて、更に鷹匠《たかじょう》のはなしに移る。その話を順々に運んでいては長くなるから、前置きはいっさい略して、単に本文だけを紹介することにした。
安政六年の十月、半七があさ湯にはいっていると、子分の一人があわただしく迎えに来た。
「親分。八丁堀の旦那から急に来てくれということですぜ」
「そうか。すぐ帰る」
八丁堀から呼ばれるのは珍らしくない。しかしそれが普通の出来事であるならば、すぐにその現場へ出張を命ぜられるのが習いで、特に八丁堀の屋敷へ呼び付けられる以上、なにか秘密の用件であることは多年の経験で
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