が、一緒になって芝居を打った三吉もお前も同類だ。片っ端から数珠《じゅず》つなぎにするからそう思ってくれ」
 嵩にかかって、嚇されたお初はわっ[#「わっ」に傍点]と泣き出した。かれは土間に坐って、堪忍してくれと拝んだ。
「次第によったら堪忍してやるめえものでもねえが、お慈悲が願いたければ真っ直ぐに白状しろ。どうだ、おれが睨んだに相違あるめえ。おめえと三吉とが同腹《ぐる》になって、七之助の兇状を庇っているんだろう」
「恐れ入りました」と、お初はふるえながら土に手をついた。
「恐れ入ったら正直に云ってくれ」と、半七は声をやわらげた。「そこで、あの七之助はなぜおふくろを殺したんだ。親孝行だというから、最初から巧んだ仕事じゃあるめえが、なにか喧嘩でもしたのか」
「おふくろさんが猫になったんです」と、お初は思い出しても慄然《ぞっ》とするというように肩をすくめた。
 半七は笑いながら眉を寄せた。
「ふむう。猫婆が猫になった……。それも何か芝居の筋書じゃあねえか」
「いいえ。これはほんとうで、嘘も詐《いつわ》りも申し上げません。ここの家のおまきさんはまったく猫になったんです。その時にはわたくしもぞっ[
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