て、一日も早く探し出したいと思っているので……。お前さんにも何分たのみます」
「承知いたしました」
 半七に別れてすたすた行き過ぎたが、平助は時々に立ち停まって、なんだか不安らしくこちらを見返っているらしかった。その狐のような態度がいよいよ半七の疑いを増したので、彼はすぐに平助のあとを尾《つ》けようかと思ったが、真っ昼間では工合《ぐあい》が悪いので先ず見合わせた。

     三

 これからどっちへ爪先を向けようかと半七は横町の角に立ち停まって考えていると、たった今別れたばかりのお六がほかの女と二人づれで、その横町からきゃっきゃっと笑いながら出て来た。
「おや、又お目にかかりましたね」と、お六はやはり笑いながら声をかけると、連れの女も黙って会釈《えしゃく》した。
「御縁があるね」と、半七も笑った。
 お六の連れは十七八のすらりとした女で、これも同じような提重を持っていた。口綿《くちわた》らしい双子《ふたこ》の着物の小ざっぱりしたのを着て、結《ゆ》い立てらしい彼女の頭にも紅い絞りの切れが見えた。鼻の低いのをきずにして、大体の目鼻立ちはお六よりも余ほどすぐれていた。
「親分さん。この安ち
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