うちわ》のことに、わたくしどもが首を突つ込んぢやあ惡うございますが、いつそこれはわたくしにお任せ下さいませんか。二三日のうちに屹《きつ》と埒《らち》をあけてお目にかけます。勿論、これは貴方《あなた》とわたくしだけのことで、決して他言は致しませんから。」
 Kのをぢさんは半七を信用して萬事を頼むと云つた。半七も受合つた。しかし自分は飽までも蔭の人として働くので、表面はあなたが探索の役目を引受けてゐるのであるから、その結果を小幡の屋敷に報告する都合上、御迷惑でも明日《あした》からあなたも一緒に歩いて呉《く》れとのことであつた。どうで閑の多い身體《からだ》であるから、をぢさんも直《じ》きに承知した。商賣人の中でも、腕利きと云はれてゐる半七がこの事件をどんな風に扱ふかと、をぢさんは多大の興味を持つて明日を待つことにした。その日は半七に別れて、をぢさんは深川の某所に開かれる發句の運座《うんざ》に行つた。
 その晩は遲く歸つたので、をぢさんは明日の朝早く起きるのが辛かつた。それでも約束の時刻に約束の場所で半七に逢つた。
「けふは先づ何處へ行くんだね。」
「貸本屋から先へ始めませう。」
 二人は音羽
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