二階から
岡本綺堂

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【テキスト中に現れる記号について】

《》:ルビ
(例)訳《わけ》

|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)現在|閉籠《とじこも》って

[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
   (数字は、JIS X 0213の面区点番号、または底本のページと行数)
(例)※[#「馮/几」、第4水準2−3−20]
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二階からといって、眼薬をさす訳《わけ》でもない。私が現在|閉籠《とじこも》っているのは、二階の八畳と四畳の二間で、飯でも食う時のほかは滅多《めった》に下座敷などへ降りたことはない。わが家ながらあたかも間借りをしているような有様で、私の生活は殆《ほとん》どこの二間に限られている。で、世間を観《み》るのでも、月を観るのでも、雪を観るのでも、花を観るのでも、すべてこの二階から観る。随って眼界は狭い。その狭い中から見出したことの二つ三つをここに書く。
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     一 水仙

 去年の十一月に支那水仙を一鉢買った。勿論相当に水も遣《や》る、日にも当てる。一通りの手当は尽していたのであるが
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