く》んで飲んでいた。お染も息が切れて水が欲しかった。
「もし、わたしにも……」
 彼女は手真似で水をくれといった。足が竦《すく》んでもう歩かれないのであった。半九郎はうなずいて両手に水を掬《すく》いあげたが、今の闘いでさすがに腕がふるえているらしく、女のそばまで運んで来るうちに、水は大きい手のひらから半分以上もこぼれ出してしまった。彼は焦《じ》れて自分の襦袢《じゅばん》の袖を引き裂いた。冷たい鴨川の水は、江戸の男の袖にひたされて、京の女の紅い唇へ注ぎ込まれた。
「かよわい女子《おなご》が血を見たら、定めて怖ろしくも思うであろう。どうだ。もう落ち着いたか」
「は、はい。これで少しは落ち着きました」
 それにつけても、第一に案じられるのは、男の身の上であった。お染は京の町育ちで、もとより武家の掟《おきて》などはなんにも知らなかったが、こうして人間一人を斬り殺して、それで無事に済むか済まないかを、まず確かめて置きたかった。
「得心《とくしん》づくの果し合いとはいいながら、お前になんにもお咎めはござりませぬかえ」
 武士と武士とが得心づくの果し合いである以上、この時代の習いとして相手を斬れば斬
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