いながら、お染はなかなか近寄ることが出来なかった。
二人の刀は入り乱れて、二つの人影は解けてもつれた。お染がだんだん近づくに連れて、鍔《つば》の音までが手に取るように聞えた。と思ううちに、一つの影はたちまち倒れた。一つの影は乗りかかってまた撃ち込んだ。勝負はもう決まったらしいので、お染ははっ[#「はっ」に傍点]と胸が跳《おど》った。彼女は幾たびかつまずきながらようように駈け寄ると、その勝利者はたしかに半九郎と判った。
「半さま」と、彼女は思わず声をかけた。
「お染か」と、半九郎は振り向いた。
「して、相手のお侍は……」
「この通りだ」
半九郎は血刀で指さした。女のおびえた眼にはよく判らなかったが、源三郎は肩と腰のあたりを斬られているらしく、河原の小石を枕にして俯向きに倒れていた。そのむごたらしい血みどろの姿を見て、お染はぞっ[#「ぞっ」に傍点]と身の毛が立った。彼女は膝のゆるんだ人のように顫《ふる》えながらそこにべったりと坐ってしまった。
元和《げんな》の大坂落城から僅か十年あまりで、血の匂いに馴れている侍は、自分の前に横たわっている敵の死骸に眼もくれないで、しずかに川の水を掬《
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