いた僵尸《きょうし》のたぐいである。雲南地方には金鉱が多い。その鉱穴に入った坑夫のうちには、土に圧されて生き埋めになって、あるいは数十年、あるいは百年、土気と金気に養われて、形骸はそのままになっている者がある。それを乾※[#「鹿/几」、313−6]子と呼んで、普通にはそれを死なない者にしているが、実は死んでいるのである。
 死んでいるのか、生きているのか、甚だあいまいな乾※[#「鹿/几」、313−8]子なるものは、時どきに土のなかから出てあるくと言い伝えられている。鉱内は夜のごとくに暗いので、穴に入る坑夫は額《ひたい》の上にともしびをつけて行くと、その光りを見てかの乾※[#「鹿/几」、313−10]子の寄って来ることがある。かれらは人を見ると非常に喜んで、烟草《たばこ》をくれという。烟草をあたえると、立ちどころに喫ってしまって、さらに人にむかって一緒に連れ出してくれと頼むのである。その時に坑夫はこう答える。
「われわれがここへ来たのは金銀を求めるためであるから、このまま手をむなしゅうして帰るわけにはゆかない。おまえは金の蔓《つる》のある所を知っているか」
 かれらは承知して坑夫を案内す
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