んにち》までにすでに幾万貫の銭を儲けたであろう。何をいうにも口を利くことが出来ないので、おめおめと彼に引き廻されているのである。
これを書き終って、熊はわが口を指さして、血の涙を雨のごとくに流した。
観るひと大いにおどろいて、その書いたものを証拠に訴え出ると、飼い主の乞食はすぐに捕われて、すべてその通りであると白状したので、かれは立ちどころに杖殺され、狗熊の金汝利は長沙の故郷へ送り還された。
人魚
著者の甥の致華《ちか》という者が淮南《わいなん》の分司となって、四川《しせん》の※[#「くさかんむり/(止+(自/儿)+氾のつくり)/夂」、312−2]州《きしゅう》城を過ぎると、往来の人びとが何か気ちがいのように騒ぎ立っている。その子細《しさい》をきくと、或る村民の妻|徐氏《じょし》というのは平生から非常に夫婦仲がよかったが、昨夜も夫とおなじ床に眠って、けさ早く起きると、彼女のすがたは著るしく変っていた。
徐氏の顔や髪や肌の色はすべて元のごとくであるが、その下半身がいつか魚に変ってしまったのである。乳から下には鱗《うろこ》が生えてなめらかになまぐさく、普通の魚と同様である
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