年と若僧とは不義姦通である。殺したものに悪意なくして、殺された者どもは不義のやからであるというので、兄は無事に釈放された。
ここに判らないのは、美少年に扮していたかの女の身の上である。官でその首を市《いち》にかけて、心あたりの者を求めたが、誰も名乗って出る者はなかった。
「可哀そうに、あの女はここの家へ死にに来たようなものだ」
徐四は形見《かたみ》の毛裘や頸飾りを売って、その金を善覚寺に納め、永く彼女の菩提を弔った。
秦の毛人
湖広に房山《ぼうざん》という高い山がある。山は甚だ嶮峻で、四面にたくさんの洞窟があって、それがあたかも房《へや》のような形をなしているので、房山と呼ばれることになったのである。
その山には毛人《もうじん》という者が棲んでいる。身のたけ一丈余で、全身が毛につつまれているので、人呼んで毛人というのである。この毛人らは洞窟のうちに棲んでいるらしいが、時どきに里へ降りて来て、人家の※[#「奚+隹」、第3水準1−93−66]や犬などを捕り啖《くら》うことがある。迂闊にそれをさえぎろうとすると、かれらはなかなかの大力で、大抵の人間は投げ出されたり、撲《なぐ
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