、あいつが飛んだおしゃべりをしたので、又うき世へ引き出されるのか」
 彼は童子を連れて下山して来ましたが、老人に似合わぬ足の軽さで、直ちに湖心寺の西門外にゆき着いて、そこに方丈《ほうじょう》の壇をむすび、何かのお符を書いてそれを焚《や》くと、たちまちに符の使い五、六人、いずれも身のたけ一丈余にして、黄巾《こうきん》をいただき、金甲《きんこう》を着け、彫り物のある戈《ほこ》をたずさえ、壇の下に突っ立って師の命令を待っていると、道人はおごそかに言い渡しました。
「この頃ここらに妖邪の祟りがあるのを、おまえ達も知らぬことはあるまい。早くここへ駆り出して来い」
 かれらは承わって立ち去りましたが、やがて喬生と麗卿と金蓮の三人に手枷《てかせ》首枷《くびかせ》をかけて引っ立てて来て、さらに道人の指図にしたがい、鞭《むち》や笞《しもと》でさんざんに打ちつづけたので、三人は惣身に血をながして苦しみ叫びました。
 その呵責《かしゃく》が終った後に、道人は三人に筆と紙とをあたえて、服罪の口供《こうきょう》を書かせ、さらに大きな筆をとってみずからその判決文を書きました。
 その文章は長いので、ここに略します
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