を探り当てた。それが人であるか鬼であるか判らないので、梁は門外へ引っ返して、燈火を取って来て更によく照らしてみると、それは一人の若い女であった。
女は容貌《きりょう》がすぐれて美しい上に、その服装もここらには見馴れないほどに美麗なものであった。こんな女がどうしてここにいたのか、その子細をたずねようとしても、彼女は気息奄々《きそくえんえん》としてあたかも昏睡せる人の如くである。そこへ他の諸生らも集まって来て、これはおそらく本当の人間ではあるまい、鬼がこんな姿に変じて我々をあざむくのであろうなどと言いながら、しばらく遠巻きにして窺っていると、女はやがて眼をあいて、あたりを見まわして驚き怖れるような様子であった。
「おまえは人か鬼か。一体どこから来た」と、梁は訊いた。
「わたくしは楊《よう》州の或る家の娘でございます。きょう他へ輿入《こしい》れをする筈で、昼間から家を出ますと、その途中で俄かに大風が吹いて来まして、どこへか吹き飛ばされたように思っていますが、それから先は夢うつつでなんにも覚えて居りません」
それを聞いて諸生らは喜んだ。梁にはまだ定まった妻がないので、神が楊州から彼に美人を
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