うること多大であったのは、次の話をお聴きくだされば、大抵お判りになるだろうかと思います」
貞女峡
中宿《ちゅうしゅく》県に貞女峡《ていじょこう》というのがある。峡の西岸の水ぎわに石があって、その形が女のように見えるので、その石を貞女と呼び慣わしている。伝説によれば、秦の時代に数人の女がここへ法螺貝《ほらがい》を採りに来ると、風雨に逢って昼暗く、晴れてから見ると其の一人は石に化していたというのである。
怪比丘尼
東晋《とうしん》の大司馬|桓温《かんおん》は威勢|赫々《かくかく》たるものであったが、その晩年に一人の比丘尼《びくに》が遠方からたずねて来た。彼女は才あり徳ある婦人として、桓温からも大いに尊敬され、しばらく其の邸内にとどまっていた。
唯《ただ》ひとつ怪しいのは、この尼僧の入浴時間の甚だ久しいことで、いったん浴室へはいると、時の移るまで出て来ないのである。桓温は少しくそれを疑って、ある時ひそかにその浴室を窺うと、彼は異常なる光景におびやかされた。
尼僧は赤裸《あかはだか》になって、手には鋭利らしい刀を持っていた。彼女はその刀をふるって、まず自分の腹を截《
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