左右にある者が追いかけたが、わずかに戟《ほこ》をもってその左足を傷つけただけで、遂にその姿を見失った。
その夜、王の枕もとに、鬚《ひげ》も眉もことごとく白い一個の丈夫《じょうふ》があらわれて、お前はなぜおれの左の足を傷つけたかと責めた上に、持ったる杖をあげて王の左足を撃ったかと思うと、夢は醒めた。
王は撃たれた足に痛みをおぼえて一種の悪瘡《あくそう》を生じ、いかに治療しても一生を終るまで平癒しなかった。
徐光の瓜
三国の呉《ご》のとき、徐光《じょこう》という者があって、市中へ出て種々の術をおこなっていた。
ある日、ある家へ行って瓜《うり》をくれというと、その主人が与えなかった。それでは瓜の花を貰いたいと言って、地面に杖を立てて花を植えると、忽ちに蔓《つる》が伸び、花が開いて実を結んだので、徐は自分も取って食い、見物人にも分けてやった。瓜あきんどがそのあとに残った瓜を取って売りに出ると、中身はみな空《から》になっていた。
徐は天候をうらない、出水や旱《ひでり》のことを予言すると、みな適中した。かつて大将軍|孫※[#「糸+林」、第4水準2−84−35]《そんりん》の門前
前へ
次へ
全38ページ中36ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング