祐慶は案内されて、かの龍神の社へ行って、龍の池のあたりを暫く眺めていましたが、それほどお頼みならば作ってもよろしい。しかし馬ばかり作ったのでは再び立去るおそれがあるから、どうしてもその手綱《たづな》を控えている者を添えなければならないが、それでも差支えないかと念を押したそうです。
 もちろん、差支えはないと言うほかないので、万事よろしく頼むことになりますと、祐慶は彫刻をするために生きた人間と生きた馬を手本に貸してくれという。つまり今日《こんにち》のモデルといったわけです。前にも申した通り、黒太夫の家にはたくさんの馬が飼ってある。その中から裕慶は白鹿毛《しろかげ》の大きい馬を選び出しました。そこで、その綱を取っている者は誰にしたらいいかという詮議になると、祐慶は大勢の馬飼いのうちから捨松というのを選びました。
 捨松はことし十五の少年で、赤児のときに龍神の社の前に捨ててあったのを黒太夫の家で拾いあげて、捨て子であるから捨松という名をつけて、今日まで育てて来たので、ほんとうの子飼いの奉公人です。そういうわけで、親もわからない、身許も判らない人間ですから、黒太夫も不憫を加えて召使っている。当
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