くえは遂に相分り申さず、さりとて家出するような子細も無之、唯々不思議と申すのほか無御座候。万一かの捨松の二代目にもやと龍馬の池の水中捜索をこころみ候えども、これも無効に終り申候。
ここにまた、不思議に存じられ候は、当日小生が撮影五枚のうち、一枚には少年のすがた朦朧とあらわれおり候ことに御座候。それは影のように薄く、もちろんはっきりと相分り兼ね候えども、それがどうも昌吉の姿らしくも思われ申候。
 貴下御撮影の分はいかが、現像の結果御しらせ下され候わば幸甚《こうじん》に存じ候。
[#ここで字下げ終わり]

 まずこんな意味であったので、わたしも取りあえず自分の撮影した分を現像してみましたが、どこにも人の影らしいものなどは見いだされませんでした。横田君の写真にはどういう影があらわれているのか、その実物を見ないのでよく判りません。



底本:「影を踏まれた女 岡本綺堂怪談集」光文社時代小説文庫、光文社
   1988(昭和63)年10月20日初版第1刷発行
初出:青蛙神「苦楽」1924(大正13)年12月
   利根の渡「苦楽」1925(大正14)年2月
   兄妹の魂、不詳
   猿の眼「苦楽」1925(大正14)年7月
   蛇精「苦楽」1925(大正14)年5月
   清水の井「写真報知」1924(大正13)年7月
   窯変「苦楽」1925(大正14)年6月
   蟹「苦楽」1925(大正14)年4月
   一本足の女「苦楽」1925(大正14)年3月
   黄いろい紙「苦楽」1925(大正14)年9月
   笛塚「苦楽」1925(大正14)年1月
   龍馬の池「苦楽」1925(大正14)年8月
※底本に見る「不便」と「不憫」はママとした。
入力:和井府清十郎
校正:原田頌子
2002年3月25日公開
2009年8月28日修正
青空文庫作成ファイル:
このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。
前へ 終わり
全128ページ中128ページ目


小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ 登録 ご利用方法 ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング