世界怪談名作集
牡丹燈記
瞿宗吉
岡本綺堂訳
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【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)元《げん》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)麗卿之|柩《ひつぎ》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#「ぞっ」に傍点]
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元《げん》の末には天下大いに乱れて、一時は群雄割拠の時代を現出したが、そのうちで方谷孫《ほうこくそん》というのは浙東《せきとう》の地方を占領していた。彼は毎年正月十五日から五日のあいだは、明州府の城内に元霄《げんしょう》(陰暦正月十五日の夜)燈《とう》をかけつらねて、諸人に見物を許すことにしていたので、その宵《よい》よいの賑わいはひと通りでなかった。
元の至正《しせい》二十年の正月である。鎮明嶺《ちんめいりょう》の下に住んでいる喬生《きょうせい》という男は、年がまだ若いのにさきごろその妻を喪《うしな》って、男やもめの心さびしく、この元霄の夜にも燈籠《とうろう》見物に出る気もなく、わが家の門《かど》にたたずんで、むなしく往来の人びとを見送っているばかりであった。十五日の夜も三更《さんこう》(真夜中の十
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