世界怪談名作集
スペードの女王
プーシキン Alexander S Pushkin
岡本綺堂訳
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)骨牌《かるた》の
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)|今日は《ボンジュール》
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)ちやほや[#「ちやほや」に傍点]
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一
近衛騎兵のナルモヴの部屋で骨牌《かるた》の会があった。長い冬の夜はいつか過ぎて、一同が夜食《ツッペ》の食卓に着いた時はもう朝の五時であった。勝負に勝った組はうまそうに食べ、負けた連中は気がなさそうに喰い荒らされた皿を見つめていた。しかし、シャンパン酒が出ると、とにかくだんだんに活気づいて来て、勝った者も負けた者もみんなしゃべり出した。
「で、君はどうだったのだい、スーリン」と、主人公のナルモヴが訊《き》いた。
「やあ、相変わらず取られたのさ。僕はどうも運が悪いと諦《あきら》めているよ。なにしろやっていることがミランドール(一種の骨牌戯)だし、いつも冷静にしているから、手違いのしようがないのだが、それでいて、しじ
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