に[#「吹き消すやうに」は底本では「消き吹すやうに」]止みましたは……。
頼家 人やまゐりし。心をつけよ。
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(金窪兵衞尉行親、三十餘歳。烏帽子、直垂《ひたゝれ》、籠手、臑當にて出づ。)
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行親 上《うへ》、これに御座遊ばされましたか。
頼家 誰ぢや。
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(桂は燈籠をかざす。頼家透しみる。)
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行親 金窪行親でござりまする。
頼家 おゝ、兵衞か。鎌倉表より何としてまゐつた。
行親 北條殿のおん使に……。
頼家 なに、北條殿の使……。扨《さて》はこの頼家を討たうが爲な。
行親 これは存じも寄らぬこと。御機嫌伺ひとして行親參上、ほかに仔細もござりませぬ。
頼家 云ふな、兵衞。物の具に身をかためて夜中《やちゆう》の參入は、察するところ、北條の密意をうけて予を不意撃にする巧みであらうが……。
行親 天下やうやく定まりしとは申せども、平家の殘黨ほろび殲《つく》さず。且は函根より西の山路《やまぢ》に、盜賊ども徘徊する
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