か、着物の矢飛白か、あだ名の由来もはっきりとは判らなくなってしまいました。いずれにしても、矢がすりお金といえば神明第一の売っ子で、この店はいつも大繁昌、楊弓《ようきゅう》の音の絶える間がないくらいでした。
そうなると又おせっかいに此女の身許を穿索《せんさく》するものがある。お金のおやじはこゝらの矢場や水茶屋へ菓子を売りにくる安兵衛という男で、そのひとり娘、そういう因縁から自分も肩あげの取れない時分から矢取女になったのだそうで、おやじは二三年前に世を去って、今ではおふくろだけが残っている。お金は今年二十歳だと云っているが、ほんとうは一つ二つぐらいも越しているだろうという評判。いや、年の方は一つや二つ違ったところで、差したる問題でもないのですが、一体このお金に亭主があるか無いか、勿論、表向きの亭主は無いにきまっているが、いわゆる内縁の亭主とか、色男とか旦那とかいうようなものがあるか無いか、それを念入りに探索する人もあったのですが、どうも確かなことは判らない。ところが、この慶応元年の正月頃から一人のわかい侍がこの矢場へ時々に遊びに来ました。
侍も次三男の道楽者などは矢場や水茶屋這入りをす
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