うわけです。大次郎はふり切って帰ろうとする。女は無理にひきとめる。それがだん/\露骨になって来たので、大次郎も気がついて、あゝ飛んだところへ引っかかったと思ったが、今更どうすることも出来ない。あやまるようにして勘定をすませて、さて帰ろうとすると、自分の大小がみえない。
「これ、おれの大小をどうした。」
「存じませんよ。」と、女は澄ましていました。
「存じないことはない。探してくれ。」
「でも、存じませんもの。あなた、お屋敷へお忘れになったのじゃありませんか。」
「馬鹿をいえ。侍が丸腰で屋敷を出られるか。たしかに何処かにあるに相違ない。早く出してくれ。」
女は年こそ若いが、なか/\人を食った奴で、こっちが焦れるほどいよ/\落ちつき払って、平気にかまえているのです。小面《こづら》が憎いと思うけれど、こゝで喧嘩も出来ない。淫売屋というなかにも、こゝの家はよほど風《ふう》のわるい家で、大次郎の足どめに大小を隠してしまったらしい。いよ/\憎い奴だと思うものゝ、こゝへ飛び込んで来たときは半分夢中であったので、いつ何うして大小を取りあげられたのか些《ちっ》とも覚えがない。こうなると水かけ論で、いつ
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