いをした大小名は沢山あります。しかも遠い昔ばかりでなく、文化、文政から天保以後になっても、廓へ入込んだ殿様は幾らもありましたから、敢てめずらしいことでもないのですが、その諸越という女がおそろしく雷を嫌ったということがお話の種になるのです。そのつもりでお聴きください。
その大名は吹けば飛ぶような木葉《こっぱ》大名でなく、立派に大名の資格を具えている家柄の殿様でしたが、それがしきりに諸越のところへ通ってゆく。勿論、大名のお忍びですから、頻りにと云ったところで、月に二三度ぐらいのことでしたが、それでも殿様は大執心で、相方《あいかた》の女に取っても、その店に取っても、大変にいゝお客様であったのです。
諸越が雷を嫌うということは、殿様もよく知っている。そこで、雷が鳴ると、その屋敷から諸越のところへ御見舞の使者が来ることになっていました。随分ばか/\しいようなお話で、今日の人たちは嘘のように思うかも知れませんが、これは擬《まが》いなしの実録です。勿論小さい雷ならば構わないでしょうが、少し強い雷が鳴り出すと、屋敷の侍が早駕籠に乗ってよし原へ駈けつけて、お見舞の菓子折か何かをうや/\しく花魁に献上
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