たものです。刺青をしているのは仕事師と駕籠屋、船頭、職人、遊び人ですが、職人も堅気な人間は刺青などをしません。刺青のある職人は出入りをさせないなどと云う家《うち》もありますから、好《い》い職人になろうと思うものは迂濶に刺青などは出来ないわけです。武家の仲間《ちゅうげん》などにも刺青をしているものがありました。堅気の商人《あきんど》のせがれでありながら、若いときの無分別に刺青をしてしまって、あとで悔んでいるのもある。いや、それについて可笑《おかし》いお話があります。なんでも浅草辺のことだそうですが、祭礼のときに何か一《ひと》趣向しようというので、町内の若い者たちが評議の末に、三十人ほどが背中をならべて一匹の大蛇を彫ることになったのです。三十人が鱗《うろこ》のお揃いを着ていて、それが肌ぬぎになってずらり[#「ずらり」に傍点]と背中を列べると、一匹の大蛇の刺青になるという趣向、まったく奇抜には相違ないので、祭礼の当日には見物人をあっ[#「あっ」に傍点]と云わせたのですが、さあ其後が困った。三十人が一度に列んでいれば一匹の形になるが、ひとり一人に離れてしまうと何うにもならない。それでも蛇のあた
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