安心も出て、四郎兵衛もゆるやかに煙草などをすいながら歩いた。
無事に鎌倉に行き着いて、型のごとくに名所古蹟を見物した。ゆうべまでは鎌倉を通りぬけて、真っ直ぐに江戸へ帰るつもりであったが、さてここまで無事に来て見ると、そんなに慌てて逃げ帰るには及ぶまいという油断が出たのと、めったに再び来ることも出来ないというので、三人は他の人たちと同じように見てあるいた。八幡の本社はこの二月の火事に類焼して、雪の下の町もまだ焼け跡の整理が届かないのであるが、江の島開帳を当て込みに仮普請のままで商売を始めている店も多かった。
しかも仇を持っているような三人は、さすがに悠々とここに一泊する気にはなれなかった。今夜は金沢で泊ることにして、見物はまずいい加減に切上げて、鎌倉のお名残りに由比ヶ浜へ出て、貝をあさる女子供の群れをながめながら、稲村ヶ崎の茶屋に休んでいると、五十前後の男が牛を牽《ひ》いて来た。
「牛に乗ってくだせえましよ。」
ここらの百姓が農事のひまに牛を牽いて来て、旅の人たちに乗れと勧めるのは多年の慣いである。牛に乗ると長生きをするなどというので、おもしろ半分に乗る人がある。鎌倉へ来た以上、話
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