があるものか。お祭が通るのぢやあねえ。早く出て來い。こいつ等、出て來ねえと唯は置かねえぞ。
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(助八は寄らうとすると、與助の猿はその頭髻《たぶさ》をつかんで引く。)
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助八 えゝ、だれだ、誰だ。惡ふざけをしちやあいけねえ。止せ、よせ。
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(助八は猿に引かれながら、上のかたに入る。)
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權三 (笑ふ。)はゝ、好い觀《み》せ物だぜ。
おかん あいつはさつきも猿に引つかゝれたんだよ。
權三 あんな奴等は猿を相手に、きやつ[#「きやつ」に傍点]/\と云つてゐるのが丁度相富だ。
おかん ほんたうに猿芝居の役者だねえ。
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(夫婦は笑つてゐる。やがておかんは氣がついたやうに上のかたを見かへる。)
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おかん お長屋の人達がみんな出てゐるのに、中途から拔け
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