九月四日
岡本綺堂
−−
【テキスト中に現れる記号について】
《》:ルビ
(例)麹町《こうじまち》
|:ルビの付く文字列の始まりを特定する記号
(例)続々|仆《たお》れた
[#]:入力者注 主に外字の説明や、傍点の位置の指定
(例)[#地から1字上げ](大正十三年九月)
−−
久しぶりで麹町《こうじまち》元園町《もとぞのちょう》の旧宅地附近へ行って見た。九月四日、この朔日には震災一週年の握り飯を食わされたので、きょうは他の用達《ようた》しを兼ねてその焼跡を見て来たいような気になったのである。
旧宅地の管理は同町内のO氏に依頼してあるので、去年以来わたしは滅多《めった》に見廻ったこともない。区劃整理はなかなか捗取《はかど》りそうもないので、わざわざ見廻りにゆく必要もないのである。それでも震災から満一ヵ年後の今日、その辺はどんなに変ったかという一種の興味に釣られて出てゆくと、麹町の電車通りはバラックながらも昔馴染の商店が建ちつづいている。多少は看板の変っているのもあるが、大抵は昔のままであるのも何となく嬉しかった。
しかもわたしの旧宅地附近は元来が住宅区域であったので、再築
次へ
全7ページ中1ページ目
小説の先頭へ
文字数選び直し
岡本 綺堂 の一覧に戻る
作家の選択に戻る
◆作家・作品検索◆
トップページ
登録
ご利用方法
ログイン
携帯用掲示板レンタル
携帯キャッシング