、彼はまたあざ笑うような眼をした。
「はい。恋の取り持ちを頼もうかと……」
こうしたなまぬるい恋ばなしを好まない頼長も、この美麗な才女に対してあまりに情《すげ》ない返事も出来ないので、いい加減に取り合わせて言った。
「お身ほどの者でも、人を頼まいでは恋はならぬか。恋はなかなかにむずかしいものじゃな」
「身にあまる望みでござりますれば……」
玉藻は遣《や》る瀬ないように低い溜息をついて、頼長の顔をそっとのぞいた。人を蠱惑《こわく》せねばやまないような情け深い女の眼のひかりに魅せられて、頼長の魂は思わずゆらめいた。
「ほう、身にあまる望みとか。これはいよいよむずかしゅう見ゆるぞ。兼輔ひとりの力に及ばずば、頼長も共どもに助力してお身が恋をかなえてやりたい。相手は誰じゃ。明かされぬか」
「お身さまの前では申し上げられませぬ」と、玉藻は藤紫の小袿《こうちぎ》の袖で切《せつ》ない胸をかかえるように俯向いた。嵐は桜の梢をゆすって通った。
「予が前では言われぬか。頼長は兼輔ほどに頼もしい男でないと見積もられたか。さりとは心外じゃ」と、頼長はいよいよ興《きょう》にふけったように高く笑った。
藤むら
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