永い眠りに就いているらしかった。しかし怖ろしい墓場へ踏み込んで、その亡骸《なきがら》を取り片付ける者もなかったので、彼はそのままにいつまでも捨てて置かれた。そのうちに寒い冬が奥州の北から押し寄せて来て、那須野ケ原も一面の雪の底に埋められた。
あくる年の春が来て、殺生石は雪の底から再びその奇怪な形をだんだんに現わしたが、旅びとの姿はもう見えなかった。彼は融《と》ける雪と共に消えてしまったのかもしれない。
それから十年も経たないうちに、都には二度の大きい禍いが起こって、みやこは焚かれた。大勢の人は草を薙ぐように斬り殺された。保元《ほうげん》と平治《へいじ》の乱である。しかも古来の歴史家は、この両度の大乱の暗いかげに魔女の呪詛《のろい》の付きまつわっていることを見逃しているらしい。玉藻をほろぼした頼長は保元の乱の張本人となって、ぬしの知れない流れ矢に射られた。
信西入道はあくまでも狡獪《こうかい》なる態度を取って、前度の乱にはつつがなく逃れたが、後の平治の乱には彼が正面の敵と目指された。彼は逃れない運命を観じて、みずから土の中に生き埋めとなったのを、再び敵に掘り出されて、その老いたる法
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