と、弓に矢をつがえて待ち構えていた。頼長は勿論、射手の二人も山門のかげに身を忍ばせていたのであるが、早くも玉藻に覚られたらしい。彼女はこちらの裏をかくようにあざけりの笑みをくれて、徐《しず》かにここを立ち去った。この機会を取り逃してはならぬと、頼長の指図で二人はすぐ牛車のうしろから射かけたが、二人ながら不思議に仕損じた。あわてて二の矢をつがえようとすると、弓弦《ゆづる》は切れた。牛車はそれを笑うように、輪の音を高く軋らせながら行き過ぎてしまった。
 眼《ま》のあたりにこのおそろしい神通力を見せられて、射手の二人も遠光も息をのんで立ちすくんでいた。頼長は一人で苛《いら》いらしていたが、驚きと恐れとに脅《おびや》かされている家来どもをいかに叱り励ましても、しょせんはその効はあるまいと思われた。
「悪魔めをこの山門内に踏み入れさせなんだが、せめてもの事じゃ」
 こうあきらめて頼長も宇治へ帰った。さきの雨乞いといい、きょうの待ち伏せといい、一度ならず二度までも仕損じた彼は、さすがに胸が落ち着かなかった。彼も悪魔の復讐を気づかって、その夜から宿直《とのい》の侍の数を増してひそかに用心していたが、
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